【　フ　ー　ガ　平均律クラヴィア曲集第1巻より　】ギター2重奏　

バッハの平均律クラヴィア曲集は、音楽にかかわる人がだれでも魅力を感じる作品です。
自身の音楽体験が増えればふえるほど、その魅力は深まってきます。
それはたぶん尋常でない集中力、体力、精神力、
そしてなにか計り知れない聖なる力が働いて書かれているように感じられてくるからかもしれません。

　この作品のように気合の入った音楽はそうたくさんはありません。
古今東西の鍵盤楽器奏者が数かぎりないアプローチを続けているのをみても、
その力は永遠のものであると言い切ってよいでしょう。

　バッハの時代、この曲集はチェンバロかクラヴィコードで弾かれたことでしょう。
ギターはチェンバロとおなじ撥弦楽器。
クラヴィコードの発音のしくみはギターの叩くスラーと同じです。このレパートリを逃す手はありません。

　フーガはその仕組みが複雑で、それぞれの声部のからみがきちんと表現できないと音楽として不十分です。

ギター２本ならそれが可能なのでは、という試みのひとつです。
部分的に技術的な問題を解決するために、声部の途中受け渡しをしています。
確認しながら進んでみてください。　

　まるで謎解きにも似た演奏の快感をお楽しみください。
同じパタンの音形の繰り返しは一種の麻薬のように働くと感じるのは、
私だけではないような気もします。

  （2017-8-24　大谷 環・記）